ビルの中に入って階段を下り、一番近くにあった部屋に入った。


「いやあ、もう、服がびっしょりだよ。まあ、洗浄が終わるまでに乾けば良いか」


そう言って、既に服を脱いでいた吹雪さんがエアコンの下に服を吊るしていた。


「そうだな、それまでには少年の刀も元に戻るだろうし、またゆっくりと休むとするか」


この辺りはオフィスビルばかりなのか、ここもその一つのようだ。


俺は二人と離れた場所で制服を脱いで、エアコンの下に吊るして椅子に腰掛けた。


恵梨香さんがいるから、吹雪さんは死ぬ事がない。


屋上で言われたその言葉が、やけに耳に残る。


もちろん吹雪さんが強いというのもあるだろうけど、確かに恵梨香さんがいたら死ぬ事はないと思う。


俺がその言葉を口にするには、まだまだ力が足りない。


そんな事が言えるくらいなら……理沙に「どうしたい?」なんて尋ねずに一緒に連れて行っただろう。


覚悟も力も足りないなんてどうすれば良いんだよ。


「少年、そんな所で休むのか?少し狭いが、ソファがあるぞ?」


「いや、良いです」


見てはいないけど、きっと二人とも裸に違いない。


そんな場所で休んだら……。


自分の理性が飛ばないように、距離を置くのが精一杯だった。