「よしよし、良い子だね。人が死んで悲しむなとは言わないけど、死んだ人にずっと執着してたら、前に進めなくなるよ。これは、少年が乗り越えるべき事なんだよ」


俺の手をそっと除けて、腕をポンポンと叩く。


頭では……わかってるつもりだ。


二人の話を聞いて、どうしようもないんだと理解していても、俺の答えが出せない。


いや、出したくないと言った方が正しいのか。


屋上の柵に近付き、チャクラムを構えた吹雪さんを止める事も出来たかった。


もっと何か手がないのかという想いと、決別しなければという想い。


どちらにも転びそうだけど、どちらにも転びそうにない感覚に包まれながら、吹雪さんが投げたチャクラムを見ていた。


フリスビーのように、高速回転しながら空気と雨を切り裂いて、一直線に新崎さんの方に飛んで行く。


到着するまでに、1秒ほどだっただろうか。


恐ろしく的確に投げられたチャクラムは、新崎さんの首を吊っているロープに直撃して、弾けるように切断されたのだ。


それと同時に消えるチャクラム。


落下する新崎さんの身体。


下を流れる川のような水に落ちて……街の外側へと流されて行った。


「し、新崎さん……」


俺は小さくそう呟いただけで、何もする事が出来なかった。