新崎さんが死んだビル。


道路を挟んで隣のビルまでやって来た頃には、雨が降り始めて、道路に水が溢れていた。


「あ、雨が今降り始めたのに……どうして道路にこんなに水があるんですか?」


「雨だけじゃなくて、色んな物を洗い流すからね。地下から湧き出てるんじゃないの?」


この口ぶりだと、詳しくは知らないみたいだな。


それにしても、ここからどうすれば良いんだろう。


新崎さんが釣り下げられているビルとこのビルの間には、広い道路があって、今の俺ではとても移動出来そうにない。


「ここからどうするんですか?まさかこの水の中、隣のビルに移動しろなんて言いませんよね?」


「まさか。ここからチャクラムでロープを切るよ。道路を流れる水に、遺体を流してもらう」











……え?


し、新崎さんを引き上げてくれるんじゃないのか?


「な、流すってどういう事ですか!?引き上げてくれないんですか!?」


と、詰め寄って吹雪さんの肩を掴んだ時だった。


「死んだ人間を引き上げてどうするつもりだ?生き返るわけではない。埋葬出来るわけでもないんだぞ?」


背後から……そんな声が聞こえた。