殺戮都市~バベル~

傷が癒えて、心が落ち着いた。


理沙の気持ちをくんで、東軍に返す為にホテルを出た俺達は、光の壁に向かって歩いた。


申し訳程度に繋がれた手が、余計に俺の情けなさを強調しているようだ。


会話は何もない。


総力戦の真っ最中だというのに、敵同士の二人が。


そして、光の壁の近くまでやって来て……俺は理沙の肩に手を回して、そっと押した。


「理沙、絶対に元の世界に戻してやるから、死ぬなよ」


そう言った俺に、理沙が振り返って見せたその顔は……全然笑ってなくて。


俺が考え過ぎなのか、「本気で言ってる?」と言っているようにも見えた。


「うん」


小さく呟いた理沙は、俺から目を逸らすように光の壁の方を向いて、歩いて行った。


理沙が光の壁を越えるまで見送って……俺は激しく後悔した。


どうして俺は、ずっと理沙を守ると言えなかったんだ。


理沙がどうしたいという気持ちも大事だろうけど、それ以前に、何があっても守るから一緒にいてくれとなぜ言えなかったんだ。


もう、その事だけしか考えられない。


肩を落とし、今来た道を戻った。


ただ、強くなろうと参加した総力戦で、俺自身の心の弱さを知ってしまった。