「えっと……なんだ。お前がおんぶしてた女の人が可愛かったから、俺のモノにするけど……良いよな?」


おんぶしている所を見られていた!?


だけど、それならどうして、このビルに入った時に力ずくでやらなかったんだ?


やらなかったのか……それとも、やれなかったのか。


前者ならなぜ?


後者だとしたら、やっぱり一人では勝てないから。


いや、そうじゃない。


「な、奈央さんは物じゃない!そんな事をさせてたまるかっ!!」


南軍のオークション会場。


あの場で起こった公開レイプの光景が脳裏をよぎり、俺はマフラーの男に向かって駆け出した。


「奈央さんって言うのか。まあ安心しな。手荒な真似はしないからさ」


日本刀の間合いの外から、グッと地面を蹴って、男の懐に飛び込んだ。


右下から、斜め上へと斬り上げる。


ここにいた西軍の人間は、俺の動きに付いて来れずに死亡した。


だけど……この男の目は、低い体勢で日本刀を振り上げる俺を、ジッと見ていたのだ。


そして、日本刀が低い位置で止まる。


何が起こったのか……ガキン!という金属音の後に、刃に目を向けた俺が見た物は……。


鎖を巻き付けた男の手で止められた日本刀だった。