殺戮都市~バベル~

怒りがなくなったわけじゃない。


だけど、花を入れ替える香月の姿を見ていると、そんな想いを無視して斬り掛かるというのは無粋な気がしたから。


香月が供えられていた花を手に取り、そそくさと逃げるようにこの場を後にするまで、俺はその行動を見ていた。


「少年、よく耐えたな。香月を殺しに掛かるかとヒヤヒヤしたが、その心配はなかったようだ」


恵梨香さんが、フッと笑いながら振り返る。


「いえ……そんな良い物じゃないですよ。ただ、俺も香月も、やってる事は大して変わらないのかなって。そう思ったら、死んだ人に大して何もしてない俺が情けなくなっただけです」


そう言って、俺は腰を下ろした。


今まであまり考えないようにしていた事を、考える良い機会だと思って。


バベルの塔侵攻に向けて、武器の強化もしなければならないし。


それくらいの時間なら、十分にある。


「この街は、人の死に触れる事が多い。罪の意識に苛まれる人間もいるだろう。だが、少年も、少年が殺した人も、生きる為に必死になった結果だ。そう思わなければ……我々は前になんて進めやしない」


「そう……ですね」


俺の隣に座った恵梨香さんに励まされて、ほんの少し、気が楽になったような気がした。