殺戮都市~バベル~

「あんたこそ……どうしてこんな所にいるんだ」


一瞬、ゾワッと感情が昂りそうになったけど……香月が手に持っている花が、理沙の墓に供えられている花が同じ物だとわかり、冷静になる。


「ど、どうしてって……お墓の花を交換しに来たのさ。津堂に言われるままにあの子を使って殺してしまったんだから……」


意外な答えだった。


勝つ為には何だって利用して、その為に人が死ぬ事なんて何とも思ってないような人だと思ったのに。


「そんな事をしたって……あんたが理沙を殺したって事実は消えない。 何をしたって、罪が消えるわけじゃないんだ」


その言葉は、香月に向けたものだったが……俺にもピタリと当てはまる。


俺だって何人もの人を殺して、誰かの大切な人を奪って来たんだ。


もしも、その誰かが俺の前に現れて、「許せない」と言ったら……俺は何が出来るだろうか。


「そ、そんな事はわかってるよ。だけど、私にはこれくらいしか出来ないのよ。死んだ人間を生き返らせられるわけじゃないし……せめて花くらいはと思ってさ」


花を供えたところで、何も変わらない。


それで死者が喜ぶはずもないし、生きている人間の自己満足。


だけど……殺した相手に花を供えた事のない俺は、香月の行為をただ見る事しか出来なかった。