眠れなくても、
亮太とのバイバイの朝はいつも早い。

今日はとても長く感じただけ。

アラームが鳴る。
気持ちを固めた。

「おはよー、おきて!!」

いつもどおりに起こす

亮太は寝起きがいい、
すぐに起きた。

「おはよー♡」
と両手を広げハグを求めてくる

応えない代わりに、
あたしは彼の好きなコーヒーを渡す

ありがとう、と受け取る彼の横顔は
なにも変わらなくて、
ただ、知ってしまったあたしには
嘘の塊にしか見えなかった。


「亮太さ、もう来ないでいーよ」

「…どうゆう意味?」

「そうゆう意味。
あたしはあたしじゃなくても
いいならいらない。」

「なにそれ?まいだから続いてるんでしょ?」

「まいだからってなに?」

「え?…だからこんな俺を受け入れてくれるし」

「そうだね、
あたしはわがまま言わないし離婚してなんて望んだこともない。都合がお互いよかったんだよ。」

「そーゆう言い方ないんじゃない?俺はまいを好きだから、こうやって来てるわけで」



「ほかにもいるじゃん、あたし以外にも。」

あたしが放った一言は思った以上に
彼に動揺を与えた   


「………」

「だからいらないの、バイバイ」

「…待って、切るから。あっちとは切るから。」


一気に冷えていく
そんな言葉でなにが繋げるの
あたしにはもう亮太に
翔太が重なることはなかった。

「子供が起きるから帰って。連絡する」

「絶対しろよ?待ってるから。
俺もちゃんと切るから。」

そう言いながら時計を気にした彼に
また冷めていく。



大人は、大人になるたびに何かを背負っていく。1つだけを選べて1つだけを大事にできない、選択肢に常に追われる。彼が家庭を気にするのもあたしが家族を気にするのも、当たり前で自然で。
ただ当たり前なこと。

別れを決意できたのは
道徳を捨てたあたしが
流されずに選べた選択肢に
背負ったものの重さ、大事さをかみしめた。