「そんなオレには…死ぬ価値もねぇんだ………死ぬってことは………生きるよりもそれほど大変なことなんだ………生きるって意味は………死ぬ価値を得るためにある………少なくともオレは今………そう思って生きてる………」


『生きてる意味』が人それぞれなら、キツネさんの生きてる意味は重い。
「死」を前にして、「生」を慈しんでる。
それを私に教えることで、「生きる意味」を自分なりに見つけだせ…と言われてるみたいでした。

「お前は甘ぇ……オレと違って……親や兄弟に可愛がられてたハズだ……なのに……そこから逃げてきた………逃げたところで何かが変わるワケでもねぇのに。……オレはそんなヤツはキライだ……見てて腹が無性に立つ…15のオレを見てるみてぇで……ムカっ腹立って仕方ねぇ……!」

怖い目で睨まれました。
でも、その目が睨んでるのは私じゃありません。
キツネさんは15歳の自分を見てる。
苦しさに立ち向かわず、楽な方へ逃げ出した自分を恨んでる。

それが分かってても……やっぱりその目は怖かった…。
そんなふうに睨まれたこともなければ、そんなことを教えられたこともありませんでした。

……私は自分がどれほど家族に優しくされてきたかを……今この瞬間まで、ずっと忘れてました……。


涙が目に溜まって、キツネさんの顔が揺れました。
溢すまいとする私に、キツネさんの声が聞こえてきました。