「……おふくろが自殺したことが信じれねぇオレは、軽い気持ちで家の様子を見に行った……。家の周りには車が何台も止まってて、その中の一台がパトだった……オレは心臓が破裂しそうなくらいビクビクした…。自殺は実はウソで、オレをこの家に呼び戻すためで、戻ってきたオレを捕まえに……サツが来たのかと思った……」

キツネさんの考えは、15歳の子供としては当然だったのかもしれません。
警察に捕まるのはイヤだと思ったキツネさんは、家から離れようとして、聞いたことのないくらい大きな泣き声を耳にした…と、話しました。


「アネキの声だった……アネキは大声で『お母さん!お母さんっっ!!』…と泣き叫んでた……」

キツネさんの心臓の音が、自分に乗り移ったのかと思うくらい、胸の奥がドクドク…と鳴り響きました。
キツネさんの目は、その頃のことを思い出したように、じぃっと床の一点を見つめてます。




「………オレのおふくろは……家で首を吊ったんだ………」


気の抜けたような声が聞こえました。
キツネさんの目は床を見てるようで見てなくて、姿は目の前にあるのに、そこにいないような感覚さえしてきました。


「……サツは……俺を捕まえに来たんじゃなくて……おふくろの自殺現場の検証に立ち合ってただけだった……。それをオレは……全部勘違いして………」



細い目から、涙が筋のようにこぼれ落ちました。
胸の苦しみを、必死でこらえようとするキツネさんが、初めて見せた涙でした………。