「…オレが家出をしたのは、15の時だった…」

根っからの不良だったキツネさんは、家の中に自分の居場所がなかった…と言いました。

「オレのアニキは成績優秀で、アネキはピアノのコンクールで優勝するような奴だった……そんな中でオレだけは成績も悪くて、特技もねえ。親からは、もっと頑張れ!もっと勉強しろ!と言われてばかりで、毎日がつまんなくて仕方なかった…」

中学に入り、同じような境遇の仲間達と知り合った。
その人達と一緒にいることで、親からも先生からもガミガミ言われるようになり……

「何もかもイヤになって家を飛び出した…。金も持たずに飛び出して1ヶ月後のことだ……。仲間から…オレの母親が自殺した…って教えられた………」

ぎゅっと握りしめられてた手の色が赤から白に変わりました。
力をどんどん入れてくキツネさんの手と顔を、交互に眺めました。

「……オレは、最初…冗談だろう…と思って、ホンキにしなかった。オレの頭の中には、『勉強しろ!もっとちゃんとしろ!』という、おふくろの姿しか思い浮かばなかったから…」

泣きそうになるキツネさんの声を聞きながら、自分と同じだ…と思いました。
私の頭の中にも、お母さんはすがるような顔をして、「ののちゃんは大丈夫よね⁉︎ 学校へ行けるよね⁉︎ 」と言う姿しか残っていませんでした。

持ってた絵筆を置いて、キツネさんの方を見ました。
これから話してくれることが、もしかしたら、『生きてる意味』につながるような気がしてきました。