家の電話番号を書いた紙は持っています。
でも、タコさん家の電話を借りてまでかけようという気にはなりませんでした。

「なんで連絡しないんだ⁉︎ おふくろさんは心配して、お前を探し回ってるかもしれねーぞ!」

イライラしながら言うキツネさんの言葉は、私の心には響きません。
怒られたり怒鳴られたりする事は「にちじょうさはんじ」で、今更恐い顔をされても慣れっこでした。

「手紙は置いてきました。しばらく1人になってゆっくり考えたい…って書きました。だから大丈夫です」

私の言葉を聞いて、キツネさんは目を吊り上げて怒りました。

「バカッ!それじゃーお前が自殺してもおかしくないって思われっぞ!」

怒鳴ったキツネさんは、真っ赤な顔をしてました。
お風呂上がりの髪から、しずくがポタリと落ちました。

「いいか⁉︎ 親ってのは、いつも第一に子供のことを考えてんだ!お前のおふくろだって、オレのおふくろだって、おんなじなんだ!!」

怒鳴るキツネさんの言葉に、耳をふさぎたくなりました。
でも、ナゼかそれができなかった。

キツネさんの顔がとても悲しそうで、涙で目が潤みかけてたから……


「…オレのおふくろはもう死んでいない…。それも、オレのせいで死んだんだ!!」

ぐっと握り締める手の色が赤くなっていきます。
その手を見つめながら聞いた話は、とても悲しくて、聞いた後もずっと心がツラくなりましたーーーーー