神社にいた時と同じように、キツネさんは黙り込みました。
悔しそうな顔をするキツネさんを無視して、タコさんはニッコリ笑いました。

「ショータの言うことなんか気にしなくていいからな。こいつはののかちゃんと同じ、家出青年なんだ」
「えっ⁉︎ キツネさんも家出してるの⁉︎ 」

ビックリして目が大きくなりました。
キツネさんはタコさんに、「今は違うし!」…と訂正を入れましたが、タコさんは、「何も変わりゃしないよ」…と言い返しました。

(ヘェー…)

威張ってたキツネさんが、急に自分と同じ種類の人間に思えました。
怒ってブツブツ言うキツネさん声を無視したまま、タコさんはニコニコして続けました。

「ののかちゃんは何も考えず、ここでの生活を満喫すればいい。ショータが少しくらい喧しくても、自分と同じ家出人なんだ…と思えば気が楽だろう?」

「……はい」
…と言ってもいいのかどうか分からず、迷いながら頷きました。

キツネさんはオモシロくなさそうな顔をしています。
タコさんは優しい顔つきで「これで思う存分絵を描きなさい」…と、袋の中身を手渡してくれました。

「あ……ありがとうございます!!」

手にしたスケッチブックと絵の具セットを抱きしめて、私は大きな声でお礼を言いました。
タコさんは嬉しそうな顔をしています。
キツネさんはやれやれ…と呟いて、立ち上がりました。

「…風呂沸いてますから」

ボソリ…と囁いた後、キッチンへ行きました。
この家では、キツネさんとタコさんが交代で食事を作ってるようでした。