タコさんが帰ってくるのを外で待ちました。
キツネさんはお風呂の準備を始めたらしく、バシャバシャと水の音が聞こえてきます。
海の方が赤く染まっています。
夕焼けが始まったんです。

私は坂道の方に駆け出しました。
夕焼けを見るのは久しぶり。
この最近、学校から帰るとクタクタで、いつも夕方はうたた寝をしてることが多かったから。

昨日の朝見に行った海に、夕日が沈もうとしています。
夕日は黒っぽい雲の中に、隠れようとしていました。

…そんな景色を見るのは初めて。
海に夕日が沈んで行くのも、初めて見ました。

温かいオレンジ色が、赤になったり、薄いピン色になったりしていきます。
そうして、空の色が薄いグレー色に染まりかけた頃、タコさんが帰って来ました。

「おかえりなさい!」

ホッとして声をかけました。
タコさんは私に、「どうしてこんな所にいるんだい?」と聞きました。

キツネさんに、目の前で扉を閉められたからとは、言えませんでした。
元から「ここにいてもいい」と言ってくれたのはタコさんだけ。
キツネさんはずっと私に「帰れ帰れ!」と言い続けていたんですから当たり前です。

答えに迷って、「夕日を見てたから」と答えました。

「夕日?」
「はい!私、海に夕日が落ちるのを初めて見たんです。あまりにもキレイで…せっかくだから、日が落ちるまでの間、ずっと眺めておこうかと思って…」

最初はちょっとウソだったけど、最後の方はホントです。
ただ、日が沈んでもタコさんが戻って来なかった時は、どうしようか…と思ってた所でした。