グスグス言いながら途切れ途切れに話してる間、キツネさんは、「そんなの当然だ」「親不孝者!」「帰れ帰れ!」…と言い続けました。
言われて当たり前のことだと思ったから、それに対して腹が立つようなことはありませんでした。


タコさんは、話し終えた私に、タオルを貸してくれました。
それから、こう言いました。

「…ここに居てもいい…とは言ってあげられんな…」

ズキッ…と胸に刺さりました。
タコさんの声は優しくなくて、どちらかと言うと、厳しい感じに聞こえたから。

「でもな…ここを出ても、ののかちゃんは家には帰らないと思うし…出て行った後どうしただろうか…と心配になるのもワシらは嫌だ。だから、一つ約束して欲しいことがある…」

声を聞いて、顔を上げました。
タコさんは優しい顔つきで、私のことを見ていました。

「…1週間だけ、ここに居てもいいことにしよう。でも、それ以降は家に帰る…そう約束して欲しい。でなければ今すぐ警察に連絡して、ののかちゃんを保護してもらう」

死なれたら困るし、事件や事故に巻き込まれたら、後々、後悔に繋がるからね…と、タコさんは理由を話しました。

「棟梁!甘いっすよ!」

キツネさんは反対の声を上げました。
でも、タコさんはそんなキツネさんの方を向いて、

「お前は人のこと言えんだろう!」

…怖い声を出しました。
キツネさんの顔が強張りました。
そして、そのまま黙り込みました。
悔しそうな、悲しそうな表情を浮かべるキツネさんに背中を向けて、タコさんが私を見ました。