タコさんは、おかしいな…と思ったはずです。
でも、何も言わずに続けました。

「ワシらは大工の中でも家を建てる方じゃなく、『宮大工』と言って、神社やお寺を建てるのが仕事なんだ」

その言葉を聞いて、あれ…?と思ったのは私の方。
てっきり音楽を鳴らすのが仕事なんだと勘違いしてたから。


「…あの……ごめんなさい…私、勘違いしてたみたいです…」

最後だから、きちんとしておこうと思って謝りました。

タコさんが不思議そうな顔してます。
キツネさんも、呆れたような顔でこっちを見ました。

「大工という仕事を、見た事も聞いた事もなかったので、大晦日の夜に耳にしたことがある『第9』という音楽を連想してました…。でも、違うんですね。大工というお仕事は、お家を建てるんですね…」

それを聞いて、キツネさんは吹き出して笑いました。
タコさんは大慌てで、そのキツネさんの頭を叩きます。

キツネさんの笑いは止まりません。
私はどこかに隠れたくなってしまうくらい、恥ずかしい思いをしました。

じわっ…と涙が溢れてきそうでした。
これまでも私は、何度もこんな体験をしてきました。

漢字が読めないと言うことは、言葉の意味が通じにくいということ。
それが、どんなに不自由で生活しにくい事か、きっと、その立場にならないと分からないでのはないか…と思います。

タコさんは私の様子を見て、「いい加減にしろ!」とキツネさんを怒鳴りました。
キツネさんは怒鳴られて、ようやく笑うのを少し我慢しました。
タコさんは私の方に振り返り、代わりに謝りました。