トイレから出てくると、タコさんはクスクス笑っていました。
キツネさんはむすっとした顔で、相変わらず不機嫌でした。


「……どうも…ありがとうございました…」

深く頭を下げました。
タコさんは「間に合って良かったね…」と言いました。
キツネさんには「マヌケだ…」と呆れられました。

2人の言葉にはそれぞれ当てはまる所があり、恥ずかしい思いがしました。
17歳の女子がトイレを貸して欲しいと、普通、大声では叫ばないはずですから。

「ののかちゃん、お昼ご飯は食べたかい?」

タコさんが聞きました。

「もらったおむすびを。ごちそうさまでした。美味しかったです…」
「そうかい。良かった。じゃあ、今からお風呂に入りなさい。その潮のついたままでは、気持ちが悪かろう?」

言われて自分のカラダを見直します。
確かにどこもかしこもベタベタして気持ち悪い。
でも…

「棟梁!」

キツネさんが慌てます。

「ヤバいっすよ!いくら何でも…!」

ゴショゴショ…と耳打ちします。
タコさんはキツネさんの話を聞いて、「大丈夫だ…」と答えました。

不思議がる私の方を見て、優しく笑いかけます。
その顔は、吉田先生にも似てます。

「ワシらは仕事場へ行く。だからお風呂から上がったら、ここの留守番をしておいてくれるかね?…泊まる場所が決まってないなら、今夜もこの家に泊まっていいから」