ワンコorオオカミですか!?



「目は、その眼鏡は大丈夫なのか。そんなに走って」
すぐに追いついた私に、不機嫌な顔のまま立ち止まってそう聞いてくれた。
「酔い止め飲んでみました」
「そんなので効くのか?」
「――病は気からですので」

未だに警戒しながら言葉を探しての会話だったけれど、美国笙は嫌な顔一つしなかった。
ただ、エレベータに乗り込んだ際、不安そうな私の顔をみて一番遠くの位置で両手を上げて、無抵抗だとアピールしたのには少しだけ笑ってしまった。


「何でピンクが嫌なんだ?」
「とにかく、そのピンクは戻して来て下さい!」
が、9階に着いてビジネス制服の所で美国笙は手当たり次第にピンクの制服を選んで私に持って来た。
店員も御客の女性も、その美貌に見惚れているのに、本人は全く気にせず黙々とピンクばかり。

思わず怒鳴ってしまったけれど、何で駄目なのか分かっていない様子だ。
「私に似合う、地味な色でお願いします。あと、できればスーツがいいです」
「じゃあ、両方買え。職場ではビジネス服の方が溶け込みやすいだろ」

……。
溶け込みやすいとか、孤高の狼みたいなこの人の口から聞けると思わなかった。