「あのね、先輩。俺だって心配したくてしているわけじゃないんです。この意味、分かりますか?」
「うーーん。全然」
心配したくないのにしてしまう意味?
「そんな所です。鈍感な所。初めて大学で会った時からそんな所が――」
始まった。
狼君が大学時代の話を持ち出すと、くどくど回りくどく分かりにくい話をするからとても苦手なんだ。
ますます、狼君の本心から遠ざかっているような、誤魔化されているような?
「地山さん、犬飼くん、おはよー」
「犬飼くん、お土産の御菓子どうぞ」
朝礼と月一回の朝会議の為にミーティングルームに集まっていた、他の部署の子たちが狼くんの回りに群がって来た。
狼君も囲まれた瞬間、女の子たちの手に持っているお菓子の数々に目を輝かせていた。
「うっわ。これ、俺も九州行ったら買うお菓子です」
「好き?」
「大好きっす」
「狼くん、これは?」
「わー。それ、一日数個しか作らない限定シュークリーム!」



