ぶっ飛ばしたのは、狼君だった。
尻もちを付いた美国笙の胸元を持って無理矢理立ち上がらせると更に殴ろうとしている。
「止めて。狼、止めなさいよ」
紺野さんが間に入って仲裁しても、2、3人の男性社員が狼君を羽交い絞めしても、狼君は暴れている。
「ろ、狼君、お願い。私は大丈夫だから、暴力は止めよう?」
そう言うと、しゅるしゅると狼君の耳と尻尾が項垂れていく。
「でも、先輩は暴力より痛い言葉で傷ついた」
「大丈夫だよ。慣れてるから、これぐらい大丈夫。ね?」
狼君の回りにはすぐに同情的な社員が群がってきたけど、美国笙には紺野さんだけだった。
「大丈夫? 唇、切れてるじゃない」
ハンカチを取り出して、美国笙の口に押し当てると心配そうに顔を覗きこんでいる。
眼鏡が無いせいで、会社一の美女でグラマラスである豊満な胸がよく見えないのは残念だけど。
狼君の日頃の人柄だろうか、――私の眼鏡のせいだろうか。
美国笙への皆の視線が冷たく感じられた。



