「負けるよ。負ける。先輩の圧勝だよ。アンタは悔しがって、エレベータ内でまた誰かに慰めて貰えばいいだろ」
「ぷぷ。ちょ、駄目だよ、狼君」
思わず朝のイチャイチャを思い出して笑ってしまいそうに(いや噴き出したけど)なったけど、止めに入る。
だって、狼君の胸焼け発言、可愛かったし。
「その発言、後悔しないといいな」
冷たい目だけど、ギラギラと怒りが滲みでていて、迫力があった。
だらしなく首に下げていただけのネクタイをほどいて机に叩きつけると、それ以上は突っ掛かってはこなかったけど、パソコン二台を使って仕事を始めたからちょっとホッとしてしまう。
「俺もクオリティはそのままで、仕上げるよ。先輩もここ空気悪いから自分の部署に戻ってください」
「えー? でも、まだ手伝いが」
「大丈夫ですから。ホットミルクごちそうさまでした」
優しい狼君が、美国笙から私を遠ざけてくれたみたいで、仕事の手伝いが何もできないのが本当に悔やまれた。
でも、そっか。
私の仕事が気に食わなかったから、彼はあのコンペに自分をねじ込んで来たんだ。



