嘘や騙しや隠し事もなく、お互いの唇がふれた。 かちかちに固まった私の唇を、狼君が優しく舌で突いてこじ開ける。 現実ではクジラは空を泳がないし、私が思い描くような魔法の世界はないけれど。 狼君の体温、狼君の言葉、――狼君に触れるときめきは、 あの世界観では説明できないような甘い世界だった。 価値観も世界観も、小さくて狭い視野も壊されて暴かれて行く。 けれどソレが堪らない。