「狼君……」
「アイツの痕なんて全て消しましたから」
その行為に意味があったとしても、脳裏に浮かぶのは狼君と紺野さんが重なるその瞬間だった。
自分が嫌になる。
「ご、ごめんね、狼君。私、ほ、本当の私は、狼君が憧れるような人じゃないから、だから、ごめんね」
首筋を抑えながら、力なく笑う。
きっと可愛くない。
紺野さんんならばもっと可愛らしく泣けただろうに私は全然可愛くなかった。
それどころか本当に可愛くない。
「狼君の尊敬している『先輩』でいるのはもう限界みたいなんだ」
「先輩?」
「ごめんね。本当に――ごめんなさい。今日はちょっともう一人にさせて欲しいな」
これ以上、狼君の前でそんな風に取りみだして情けない自分を見せたくなかった。
自分でもね、知りたくなかったんだよ、狼君。
情けなく笑うと、自分でも信じられないぐらい弱々しくその場から逃げだす。



