ワンコorオオカミですか!?

悲鳴とは本来、恐怖や歓喜の時に感情を叫んでしまう行為なので、間違っても可愛い声なんて上げられない。

狼君の電話に部長が出てしまったのあらば尚の事。

狼君の反応が気になる。

「さて、お前のせいで怪我したがお前の為に駅まで送るか」
「美国部長!?」
「犬飼にこの部屋で暴れられたら迷惑だからな」

カーディガンを羽織った美国部長は、玄関のドアを開けると私に出ろと睨む。


匿ってくれる場所は此処しか無かったのに。
狼君は、私の家には木を使って渡ってしまうような人だもん。

泣きそうになりながら、駅までの道をゆっくり連行されて行く。

もう後は、神のみぞ知る。

昼に通った道なのに、何故か遠く感じられた。

タクシーが通る大通りで、美国部長は目立つスタイルに、長くすらりとした手で簡単にタクシーを止めてしまった。


「地山美冬」

「はい!?」

タクシーに乗り込んだ私を、美国部長は急にフルネームで呼ぶ。
何が起こったのか思わず目をパチパチさせてしまった。

「今度、俺の家に一人で来たら、摘まみ食いするぞ」
「え……?」
「一人で男の家にのこのこ上がったんだから、犬飼の気持ちも察してやれよ」

そう言うと、運転手さんに勝手に代金を渡して、そのまま窓が閉まりタクシーは発車する。

歪んだフレームの眼鏡からは、美国部長が甘く微笑んでいるように見えたのはきっと気のせいだと思いたい。


タクシーからは小さくなる美国部長の肩に掛けられたカーディガンがゆらゆら揺れているのが見えていた。