◇◇◇



ピンポーン……



震える人差し指でインターフォンを押す。


暫しの沈黙のあと、「はーい」という元気な声が響いてきてドアが開いた。



「あら、涼夏」


「こんにちは」


「こんにちは。圭介はまだ部活から帰っていないのよ」



こうやってあたしが顔を出せば、今はもう“イコール圭ちゃん”という図が出来上がってしまっている。



「待っててもいい?」



圭ちゃんには今日圭ちゃんの家に行くことをメールで伝えてある。


だからちゃんと帰ってきてくれる……はず。



「いいわよ。一緒にお茶でもしながら圭介を待っていようか」


「うん」



この家には何度も来ているのに、絢華ママとふたりでお茶なんてしたことがあっただろうか。


あたしが覚えている限りでは一度もない。


そう思うとなんだか凄く緊張してしまう。