「え、なに?」
「ねぇ、鍵掛けた後どうしたらいい?」
「あー…、ポストに入れるか、みぃちゃんが持っててもいいよ」
「持っててって言われても困るよ」
「なんも困んねぇだろうが」
「ポストに入れときます」
「言うと思ったわ」
だよな。
美咲が持って帰るとは言わないだろう。
だから思わず苦笑いが漏れる。
「そう言えば、今何処に居るの?」
「何処って仕事」
「は?」
「だから仕事」
「えっ!!もしかして現場仕事してんの?」
更に美咲の大声で耳からスマホを少し離す。
つか、そんな驚く事ねぇだろ。
きっと美咲からすると、俺はホストと言うイメージなんだろうけど。
どちらかと言うと、美咲からはホストと言うイメージで見られてほしくないのは、確か。
「あぁ。つーか声でかす。、耳痛てぇよ」
「ちょ、何でそんな仕事してんのよ?」
「何でって、俺トビって言っただろうが」
間違ってはいない。
まぁ、美咲からすると不思議で仕方ないんだろうけど。
″つーか、翔さーん!そこの道具持ってきて下さいっす″
不意に耳に届いたタケルの声。
地上から見上げる俺はその高い位置に居るタケルを見上げた。
俺の足元にある道具に指さしている。
そのタケルに頷き――、
「そうじゃなくて――…」
「悪りぃ。ちょっと呼ばれたから話はまた今度」
丁度いいタケルのタイミングに安堵する。
何故か美咲とは仕事の話はしたくない。
深く追求されても困る。
「あっ、ごめん」
「じゃあな。パン食えよ」
一方的に切った電話に一息つく。
スマホをポケットに押し込んで、足元にある道具を持ち、タケルの場所へと向かった。



