「なんで?」


案の定、スネたような口調に頬を膨らませる顔。


「こんな所でするもんじゃねーし」

「だからホテル行こうって誘ってんじゃん」

「悪いな。マジで疲れてんだわ」


正論な言葉を並べ、ミカの身体をきつく抱きしめる。

その行動に乗せられるかのようにミカの腕が俺の腰に回った。


「別にいいけどさ。楓と付き合おうなんて思ってもないし。付き合ってもいい事なさそうだし」

「あ?だったら来んなよ」

「あーあ…なんか今日の楓はいつもと違うね」

「違うって?」

「冷たいって言うか…」

「だから疲れてんだって」

「怒ってる?」

「怒ってねーよ」

「…もしかして気になる人出来た?」

「え?」

「好きな人、とか…」


何でだろうか。

一瞬、あの女が頭を過った。


大人びた風貌で凛とした綺麗な顔。

だけど高校生と分かってしまった今、裏切られた様な感覚が脳裏を過った。


高校生に興味は、ない。


「そんな奴いねぇよ」

「どうだかね。私は楓が好きだけどなー…」

「はいはい。んじゃ気を付けて帰れよ」


おもむろに離した身体。

ミカは納得がいかない様子で俺から離れた。

思ったよりも、すんなりと。


「はーい。じゃまた来るね、目の保養に」

「は?んだ、それ…」


クスリと笑ったミカが姿を消した後、俺は車に乗り込んで、深く息を吐き出しポケットからタバコを取り出しそれを咥える。


そのまま気分がイマイチ乗らないまま家路を急いだ。