もう気力もねぇんじゃないかってほどに弱ってる身体。

そんな美咲から視線を外し、俺は数枚取ったティッシュで床を拭く。


「ご、ごめんっ、」


再び謝る美咲の手はティッシュが握られ、その表情は途轍もなく苦しそうだった。


「いいよ。みぃちゃんは座ってな」

「ごめんね…」


あれ?ちゃんと可愛く謝れんだ。と思うと内心笑みが漏れる。

思わず顔を上げると同時に美咲の瞳とかち合った。


潤んだ瞳が戸惑うように揺れ動き、そして戸惑う様に震えた唇。

その綺麗な顔が慌てた様に背けられる。


多分きっと、仕事の一環だとしたら俺は、その頬に簡単に触れてただろう。

どうした?大丈夫?って。

そして頬に触れて、その身体をギュっと抱き締めてただろう。

今、ここがホストと言う空間だとしたら簡単に抵抗もなくそうしていただろう。


拭き終わって立ち上がった俺にも気づいてないんだろうか。

綺麗になってもまだ拭き続ける美咲に笑みが漏れる。


その微かに笑う声に反応した美咲は、「え?」と小さく漏らし視線を上げる。


「みぃちゃん拭きすぎ。いつまで拭いてんだよ」


そう言った俺から美咲は再び床に視線を落とすも、恥ずかしながらに手を止めた。


「はい。ティッシュ」


手を差し出すと美咲は俺の手の平にティッシュを置く。

微かに触れたその冷たい手を、強引に引っ張って抱きしめようと思うのも、仕事柄か…それとも自分の本心か、そんな事すらも分かんなくなってた。