「いや…、ホントに私はいいから」

「だったら俺が連れて来た意味ねぇだろ」


言った事に間違いはなかった。

フライパンを置き、シャツを肘まで捲りあげる。


つか、このフライパンこそいつから使ってねぇんだと思うほどだった。

チャーハンの素っつっても一か月前に買ったもので、今の今まであった。

結局、俺の性格上、買ったにも係わらず何もしないまま放置なんだろうと。

と言うか、忙しすぎて作る暇もない。

こんな形で、役に立つなんて思ってもみなかったけど。


「あっ、私が作るから」

「は?みぃちゃんは座ってろって、一応客だし」

「でも…、何か悪いし」

「悪い?悪いって何に?」

「……」

「もしかして俺に?」

「勝手に連れて来た俺に申し訳ないって、そんな事思う奴なかなかいねぇよな」


口角を上げた俺に、美咲は申し訳なさそうに顔を顰め俯き、そして視線を逸らす。

強がってる美咲なんて何処にもなく、初めて会った頃の美咲は何処にいった?と思うくらいに素直で。

だけど今いる美咲が本当の素なんだと改めて思った。


「あー…じゃあさ、卵取ってくれる?」


顔を上げて頷いた美咲は冷蔵庫に手を掛け開ける。

そんな美咲から視線を外したと同時に、パキッと小さな音で再び美咲に視線を送った。

美咲は小さなため息をつき、今まさに落ちたであろう卵を呆然と見つめる。


「みぃちゃん?」


俺の声にハッとしたように美咲は慌てて冷蔵庫を閉めた。


「ご…、ごめん。ホントにごめん」


焦ってしゃがみ込む美咲はそのまま素手で落ちた卵を救おうとする。


「俺がすっから、みぃちゃんは手荒いな」


水を出し、目で訴える俺に美咲は表情を崩したままその水に手を差し出した。