「全然、金額が違うよ」

「同じに思えばいいだろ」

「思える訳ないじゃん」


確かに思える金額じゃないことは確か。

だけど、そうすることで俺の中での安堵ってもんが見えた気がした。


「みぃちゃん何か食った?」


視線を送ってきた美咲にそう呟くと美咲は首を振った。


「じゃあ、何か食いに行こ」


昼から何も食ってねぇ俺の身体は正直で、空腹が増す。

腕時計に視線を落とすと、もう既に時計の針がもうすぐで23時を回る。

あー、まじか。そりゃそうだろうな。と、思うと同時にこんな時間まで美咲を連れ回した事に申し訳なく感じた。


俺から視線を背けて俯く美咲に、「みぃちゃん?」と再度呼びかけた。

そしてそのまま立ち上がり、美咲の前に腰を下ろす。


顔を上げた美咲の瞳とかち合うと、その瞳が少しだけ泳いだ。


「…私は、いいや」


そしてまた美咲は困ったように視線を落とした。


「何で?ちゃんと食えよ。また金の事、心配してんの?」


ただ首を振る美咲は、全く口を開こうとしない。

ま、時間が時間なだけに、こんな時間から食いたくもないだろう。


だけど、全く食事すらまともにしてないって言うのが美咲の細い身体から伝わる。

だけど、もうこんな時間。


「あ、そか。ごめん。もうこんな時間だし、親心配すんもんな。送る」


流石にこの時間はやべぇなって思いながら軽く息を吐き捨て苦笑い気味に美咲に視線を向けた。

だけど、美咲の表情は固く、俺から視線を避けるように海を見つめた。


「…誰も居ないから」


小さく呟かれた声。


「え?誰も?」


だから俺までもが小さな声だった。

誰もってどう言う事?


「うん。だから、心配しなくていい。先に帰っていいよ」


先にって、先に帰れるわけねぇだろ。

むしろ心配もする。


「いやいや普通におかしいだろ。俺が勝手に連れてきて先に帰れって?そこまで俺酷い男じゃねぇから」

「でも、大丈夫。心配しないで」


だから心配するっつーの。

無表情に答える美咲にこれ以上何も聞く事は出来なかった。

本当はもっと聞きたいけど、これ以上、こいつの領域に踏み込んではいけないと、そう思った。


「あー…じゃあさ、食いに行くのが嫌だったら俺んち来いよ。何か作ってやっから」


言葉を選んで出したのがその言葉で、ハッとしたように美咲の顔が上がった。

間違った事を言ったんだろうか…と思ったのも束の間。

美咲の微かにあたふたした瞳が揺れる。


あー…、そっか。悪い。

家に誘ったことが悪かった、と認識する。