友達を叩いてしまった事を思い出したんだろうか。
美咲は暫く右の手の平をジッと見つめた後、拳を作る。
「ありがとう。でも…、受け取れない」
そんな小さく口を開いた美咲は封筒を俺の元へと押し返す。
その封筒は俺の膝へと置かれ、落ちそうになる封筒を俺は軽く掴んだ。
「何で?」
「これは…、これは翔が頑張って稼いだお金だから。だから、そんな簡単に受け取る事は出来ない」
申し訳なさそうに言ってきた美咲に思わず笑みを漏らす。
断られた事に対してじゃなくて、美咲が俺の名を呼んだから。
そう、初めて呼ばれた名前に。
「俺の事、名前で呼んだの初めてじゃね?」
少し込み上げて来た嬉しさが、また笑みに変わる。
やっぱ、こいつは他の女と違う。
強がってばっかだけど、本当は違うって事。
だからもう少し、美咲の事を知りたいって、そう思った。
一方的でもいい。別に美咲から得たいものなんて何一つもない。
掴んだ封筒をもう一度、美咲の膝に置き軽くポンと突く。
「これはやる」
「いいよ」
「受け取れって。この前、居酒屋に付き合わせたし、あの時みぃちゃんに奢ってもらったし」
そう言って困った表情をする美咲に口角を上げ、微笑んだ。



