「俺、高校行ってねぇんだ」
「……」
「…って言うか中卒ってやつ。俺が産まれてすぐ両親は離婚したみたいで親父の顔すらしんねぇ」
「……」
「母親一つで俺を育ててさ、お袋は毎日朝から夜まで働いてた」
「……」
「けど俺、中学の頃から荒れだしてどうしょうもねぇ奴だった。お袋が必死で稼いだ金をせびるばっかで…」
「……」
「そんなお袋が高1の夏に死んだ…」
過去を語るのも…
こんな話を知ってほしい訳でもなかった。
今までずっと心に秘め込んでいたものを誰かに打ち明けたりする事なんて一度もなかった。
なのに…こんな話をしてどうする?ってぶっちゃけ思った。
こんな話をする為にココに来たんじゃない。
なのにここに来ると昔を思い出し、当時の記憶が蘇るとともに気づけば勝手に口が開いてた。
生きてきた中で、あの時が一番辛かった時期。
俺の所為で死んだと思えば思うほど自分を苦しめてた。
男のプライドか自分のプライドなのか分かんねぇけど、誰かに頼る事自体…嫌だった。
「癌だった。お袋はそれに気づいてたと思う。だけど俺が金せびるばっかで、生活も苦しくて…、だからお袋は病院行かずに働いてた。倒れた時にはもう既に手遅れだった…」
当時の俺なんかには全然、分かんなかったけど。今思うとどれくらい苦しめてたんだろうと思った。
遊び暮れてたあの頃は、お袋が働いた金をほとんど使って…
親孝行なんて結局一度も出来ないままだった。



