暫く走って不意に視線を向けると、美咲は疲れ切った様子で眠っていた。

今日の出来事が頭の中を掛け巡り、関係ない俺までもが、どうしていいのか分かんなかった。


別にほっとけばいいものの、それが出来ない俺は美咲に逢着しすぎてんだろうか。


車を走らせて1時間以上は経つ。

次第に見えてくる風景は、さっきまでとは真逆の明かり一つもない風景だった。

広く広く続く果てしない海。

夜の海だからこそ、海と空の境目なんか分からず、ただ暗闇が広がるばかりだった。


海が一望できる駐車場に車を停める。


エンジンを完全に止め、まだ眠ってる美咲の肩に触れた。


「…みぃちゃん?」


軽く揺する俺の声さえも届かない美咲を、更に何度か呼びかける。

その声に少しづつ反応し始めた美咲は目を薄く開け、


「みぃちゃん」


肩をポンポンと軽く叩いた。

開ききった美咲の瞳とかち合うと、俺は口角を緩める。


「あっ、ごめん。寝てたね、私」


乗ってすぐに眠りに入った美咲は結局着くまで寝てて、それが物凄く疲れていたんだと物語る。


「ううん。ちょっと外出ねぇ?」

「うん…」


車から降りると、一瞬に潮の香りが鼻につく。

まばらに照らされる街灯が微かに海を映し出し、波の音が心地よく感じる。


…あの時と何も変わってない、この風景に懐かしさを感じた。