着いた場所はずらっと高級住宅が広がる密集地だった。
そのほとんどが分厚いレンガと盛大な門で囲まれている住宅。
凄いとしか言いようがないくらいの家が並び建つ。
近くで車を停め、美咲が車から降りてその背後を目で追っていると、不意に鳴り出したスマホに手を伸ばす。
…流星か。
思わず画面に表れる名前にため息をつく。
これから言われることに憂鬱さを覚えた。
「…はい」
「お前、何処いんだよ!!」
案の定、受話口から漏れる流星の声は怒りに怒ってる声で、思わず顔を顰める。
「悪い。今日、無理だわ」
「はぁ!?お前、ふざけてんの?」
「ふざける元気もねぇんだけど」
「今、何してんだよ?」
「ちょっと外せねぇ用事で行けそうにねぇの」
「つか、そんな外せねぇ用事な訳?あの美咲って子」
「…え?」
思わず流星の口から出た美咲の名前に声を詰まらせる。
「お前が来る前、探してたから。一緒に居んじゃねぇの?」
「あー…」
そか。こいつ美咲と会ってんのかよ。
ならもう言い訳すら出来ねぇな。
「つかお前どうすんの?こっちは大変なんだけど」
「悪い」
「悪いってもんじゃねぇよ。何でお前は居ねぇのかって来た女に聞かれるばっかだしよ」
「体調悪いっつっとけよ」
「体調っつっても、お前見たって奴が居んだからどうしょうもねぇだろ」
「じゃ、外せない急用で」
「お前なぁ…」
流星のため息が深く聞こえる。
こうなってしまった限り、俺だってどうしようもねぇし。
今更帰るわけにもいかない。
こいつを置いて帰るわけにもいかない。



