「なに?」
「なんでそうなる訳?」
「なんでって、みぃちゃん一人にすると危ねぇから」
言った事に嘘はなかった。
こいつ一人にすると何するか分かんねぇし、危ないから。
なのに美咲の口からため息が漏れる。
「あ、あのねぇ…。私そこまで子供じゃないから大丈夫ですけど」
「連れて行くよ」
呆れた様に返してきた美咲に、俺は頬を緩めた。
「ってか、仕事でしょ?」
その言葉に。
あぁ、そうだった。と意識が戻る。
つい美咲との空間にいる事で、これから仕事だと言う事をすっかりと忘れてしまっていた。
だけどもう時間はとっくに過ぎている。その挙句、遅刻だと言う時間。
今更、戻ったって…と思う反面、こいつを…美咲をこのまま一人にさせる方が嫌だった。
むしろ、それが出来なかった。
「別にいいし。みぃちゃんの為なら」
あながち間違ってはいない。
だけど、何でそんな事を言ったのかも自分でもわかんねぇし、こいつの為に何かをしても自分に得ることすら何もないって分かってでも、何故かほっとけなかった。
間違った事を言った覚えはない。
案の定、美咲はびっくりした表情で俺を見上げた。
「はぁ!?何言ってんの?アンタ馬鹿じゃない?私の為にくだらない時間使ってんじゃないよ。アンタNO1なんでしょ?」
やっぱ変わった女。
ほかの女なら、面倒くさいってほど付きまとうのに。
俺が言った事に他の女なら喜ぶ事を、美咲は喜ばなかった。
やっぱり、他の女とは違うかった。



