次第に唇を噛みしめ、潤んだ瞳がこれ以上に悲しそうで、今すぐにでも涙が落ちてくるんじゃねぇかって思った。


「お前、言いすぎだろうが」


つい美咲を軽く押しのけて、咄嗟に口を挟んでしまった。

案の定、美咲は唖然として俺を見つめる。


「は?お前誰だよってか、部外者は黙ってろよ」

「あ?」


部外者で悪かったな、おい。

つか隣に居る女も女。その女の私は関係ないって言う素ぶりに腹が立つ。

馬鹿は馬鹿と居るってやつか。

アホらし。そう思い俺は軽く一息を吐いた。

そして思わず眉間に皺が寄ったと同時に、服を引っ張られる違和感。


「んだよ…」


美咲は戸惑った様子で俺を見上げ、軽く首を振った。

まるで、もういいからやめてよ。って感じで美咲は顔を顰めた。


「ほっとくのかよ」


思わず出てしまった舌打ち。

だけど、とりあえず行こうと言った美咲に従うしかなく、俺の腕を掴んだまま足を進めていった。


つか、さっきまですげぇ怒ってたじゃねぇかよ。

しかも、なんで急に帰りだすのかも分かんねぇし、まじで意味わかんねぇよ。


中途半端なまま帰りやがって。

これじゃあ、何しに来たのかも分かんねぇだろ。

落ち着いている美咲とは裏腹に、何故か俺は美咲よりもイライラしていた。


「…ごめん」


ホテル街を抜けてすぐ、離された腕と同時に美咲から小さく謝罪の言葉が漏れる。

その言葉に思わずため息が漏れた。