諒也にバレるのも早かった。

俺が入院して1ヶ月と少し経った頃、諒也が病室を訪れた。


「…翔さん?」


そう言って入ってきた諒也はベッドの横にあるパイプ椅子に腰を下ろす。


「早いねー、バレんの」


苦笑いになる俺に諒也は顔を顰めた。


「あんだけ来ていた翔さんが全く来なくなったら普通なんかあったと思うだろ」

「そうだよな。流星に聞いたのか?」

「そう。調子はどうっすか?」

「うーん…良いとはいえねぇけどな。病院の空気にしんどい」

「まぁ、俺も経験済みだからわかるけど」


諒也は苦笑いしながら俺を見た。


「香恋は元気?」

「うん、元気に大きくなってる」

「そか。良かった」

「諒也?美咲のお母さんの様子、たまには見に行ってやって」

「あぁ、うん。3日前に行ったら元気そうだったわ。美咲、元気にしてるかなって言ってた」

「は?なに?アイツお母さんにも連絡してねぇのかよ」

「まぁ、美咲だからなぁー…翔さん、美咲には?」

「言うわけねぇだろ。あと2年残ってる。俺で帰って来るとかありえねぇだろ」

「…でも美咲には言っといた方がいいんじゃねぇの?」

「諒也?絶対美咲には言うなよ。言ったら俺、お前を許さねぇから。俺の所為で帰らすような事はしたくねぇから」

「……」

「ごめんな、諒也。俺の事も、美咲のお母さんの入院の事も全部俺の所為にしたらいいから言わないでほしい」

「……」

「葵ちゃんにも俺の事は言わなくていいから。仕事が忙しいって言っといて。香恋も居るんだし余計な心配させたくねぇから」


それ以上、諒也は何も言わなかった。

ただ、この苦痛な入院生活がただ、過ぎるのをずっと待っていた。