「あの人、ほんっとよく来るよね。翔くんの事、大好きじゃん」

「……」

「なーんか、物凄いオーラだし。まさしく高嶺の花だよ」

「……」

「モテる男は大変だよねぇ…」

「……」

「翔くんの見舞いってなに?女の子しか来ないじゃん」


俺だって頼んでる訳でもねぇよ。

勝手に来んだからよ。

実香子はクスクス笑いながら点滴を見上げ、あとほんの少しの点滴を早く落とそうと、実香子は速度を速めた。


「なぁ、実香子?」

「うん?」

「この点滴やめたいんだけど」

「え、気分悪い?」

「かなり。気分悪くて咳も出てくっし、なんなのこれ」

「副作用かな。どこか痛い?」

「背中とか。つーかもうどこが、とか分かんねぇわ。ここの空間に居る事自体しんどい」

「頑張ろうよ。私も居るから」

「実香子が居たところでなぁ…」

「あ、そっか。彼女がいいもんね。…ごめんね、私で」

「いや、助かってるよ。ありがとう」


頬を緩めた実香子は腕から針を抜き、俺の脈を測る。

そしてそれを紙に記入し、俺に視線を送った。


「あれからどう?美咲ちゃんのお母さん元気?」

「仕事はセーブしてるって言ってた。調子はいいっつってたけどな。俺がここに居っから見に行けないけど」

「翔くんが入院してるの知ってるの?」

「いや、言ってねぇよ。諒也も知らない。知ってるのは流星と蓮斗だけかな。仕事一緒だし」

「そう」

「私がこっちに移動したから美恵さんに会えなくて、どうしてるかなって思ってたの」

「……」

「あっちの病院ではさ、よく顔合わせてたから」

「そか」

「じゃあ、気分悪くなったりしたら呼んでね。私今日、夜勤だから」

「ん、」


実香子が出て行ったあと、俺はシーツを深くかぶり目を閉じた。