「つか、なに?」


思わず苛立って実香子を睨むと沙世さんがグイっと俺の肩を掴んだ。


「あなたの事でしょ?あなたに何かあったら私が困るのよ。それに美咲ちゃんだって困るでしょ?一番悲しむのは美咲ちゃんでしょ?」


美咲の名前を聞いて深くため息を吐き出す。

アイツ、いねぇんだからなんも困んねぇだろ。


むしろこの何もしない入院生活が毎日美咲の事を思い出しそうで、余計にしんどくなりそうだった。


「俺、なんの病気?そんな長い事入院してさ、死ぬのかよ」

「死なない。そんな死ぬ病気じゃない」

「じゃあ、入院しなくてもよくね?」

「しないと翔くん、お酒飲むでしょ?タバコ吸うでしょ?ご飯も食べないでしょ?改善しないと、ほんとに死んじゃうよ?」


実香子は目を潤ませて俺に必死で問いかける。

わかってっけど、そんな事。


「翔くん、今は自分の身体の事、心配して。お願い」


沙世さんが俺の背中をゆっくりと撫ぜる。


「わかったから。…ちょっと独りにさせて」


俺が離れることによって、沙世さんの手が背中からな離れていく。


「実香子ちゃん、ごめんね」

「あ、いえ」


その声を背後に聞きながら俺は休憩室の一番端の空いている席に腰を下ろした。

うな垂れる様に机に突っ伏して目を閉じる。


いつかはこうなるんじゃないかって、思った時もあった。

でも、なる訳ねぇわって言う気持ちの方が大きくて実際聞くと、自業自得かって思ってしまった。


必死で頑張ってきた結果がこれかよ。って思うと、馬鹿らしくなってきた。


逢いたい、…美咲に。


もうすぐで離れて3年になる。

ここ3年、ほんとうに思い出さないようにして来たのに…