「ずっと、翔のこと好きだから…」

「俺も好きだよ」


キスを交わし、どれくらい抱き合っていたのかも分からなかった。

時間が刻々と流れ、不意に聞こえて来たスマホのアラームに思わずため息が漏れてしまった。


寝るときにセットをしておいたアラームがうっとおしいくらいに耳に張り付く。

それを切ろうと、抱いていた美咲の腕をそっちに伸ばし、その音を切り一息つく。


「シャワー浴びるわ」


寝転んでいる美咲の頭を撫ぜて起き上がり、俺はその場を離れた。


風呂場に着き、俯く俺の頭上からシャワーの水が叩きつける。

気持ちを落ち着かせようと、深呼吸し、暫くその場から動けなかった。


今更、美咲に言ったことを後悔してしまった。

待てねぇ。なんて言った事を後悔した。


冷静になって考えてみたら、何を言ってしまったんだろうと、そう思った。

困らせるような事を言ったことに、深いため息が出てしまった。


風呂から出て、そのまま夜の仕事に行く準備に取り掛かる。

髪を乾かしてリビングに行くと、ソファーに蹲ってた美咲がゆっくりと顔を上げた。


冷蔵庫から水を取り出し、乾いた喉に流し込んで、美咲に視線を向ける。


「みぃちゃん、どうする?このままここに居る?」


そう言いながら美咲の傍まで行き、その横に置いていたシャツに腕を通した。


「帰るよ」


小さく呟く美咲から視線を逸らし、俺はテーブルに置いてある香水を吹きかけ、腕時計を嵌めた。


「じゃあ、送る」

「…いや、いいや。もう少しだけここに居る」


そう言った美咲の声がいつもより小さく、寂しそうに聞こえたのは気のせいだろうか。