「…どうしたの?」

「ごめん」


驚く美咲の声に、俺は謝ってもう一度美咲の身体を抱きしめる。

自分自身、この感情をどうしたらいいのかなんて分からなかった。


「何か…あった?」

「俺のほうかもしんねぇ…」


ため息を吐き出した後、小さく呟く俺の声が小さく消えていきそうだった。


「何が?」

「待てねぇの、俺のほうかもしんねぇ…」

「翔?」

「5年…長げぇよ」


ごめんな。

ごめん。

こんな事言って、ごめん。


ずっと美咲には弱音なんか吐くつもりなどなかった。

頭の中で思っていても、美咲には言わないでおこうって思ってた。

だけど実際、美咲を目の前にすると、思いが口から吐き出されていた。


「言うの遅いよ」

「ごめ…。みぃちゃんより俺のほうが弱いわ。…情けねぇよな」


ほんとに情けないって思う。

5年くらい平気で待てよって思うよな。

俺だって、平気で待てるって思ってた。

だけど、今じゃどうしようもねぇってくらい寂しい。

ごめんな、こんな俺で。


「美咲?」

「うん?」

「最後に抱かせて?」

「…いいよ」


美咲の唇に優しく自分の唇を重ねる。

美咲の肌に触れ、そして唇を落としていく。

肌と肌が触れ合うこの感触から熱が増し、抱きしめる身体から熱を帯びる。

2人の吐息が混ざり合い、美咲の声が漏れてくる。

その美咲の声に俺の理性が止まりそうもなかった。


激しく抱き合う身体が更に熱をおび、


「…あっつ、」


思わず呟いた言葉とともに動かせていた腰の動きを止め、そのまま倒れこむように美咲を抱きしめた。


「…私も熱い」

「やばい。動いてねぇのにイキそう」


そう言った瞬間、クスクス笑う美咲の声に俺は顔を上げて美咲をみる。


「つか、なんで笑った?」

「ううん。笑ってないよ」

「笑ってんだろ。なに?イクの早いって?」

「違うよ」

「仕方ねぇだろ。いつも以上に気持ちいいんだから」

「うん、私も」


微笑む美咲にキスを落とす。

何度も繰り返すキスと共に動きを再開させると、美咲の感じる声が漏れてくる。

その声に溺れてしまったのは俺の方だった。


再び熱を帯びる身体が火照りだす。

手放したくないと思えば思うほど、更に求めたくなってしまう。

今まで味わったことのない感情が俺の中を支配していた。