「え、なに?梨々花、お前の仕事手伝ってんの?」

「事務的処理な。忙しい時、手が回んねぇんだよ。他の奴も色んな案件もってっからこれ以上頼めねぇし。んじゃ、リリがそれくらいならやるって」

「すげぇな、梨々花。こんな時間まで手伝ってんの?」

「んなわけねぇだろ。あいつソファーで寝てたからな。22時頃からマジの爆睡。お前の電話で起こして連れて帰ったから」

「だろーな。だからこんな時間まですげって思ったし。で?何それ。役に立ってんの?」

「いないよりはマシ」

「んだ、それ」


フッと笑い窓側に視線を向け流れていく景色をボンヤリと見つめる。

真っ黒な暗闇に一息吐き、目を軽く瞑った。

そしてその閉じた目をゆっくりと開け、「なぁ?」俺は小さく呟く。


「もしも梨々花が何年もこの土地を離れていくってなった時、お前ならどーする?」

「は?なにその質問」


なんでこんな事、蓮斗に言ってんのか俺も分かんなかった。

案の定、蓮斗は何言ってんのコイツはって感じに口を開く。


「うーん…お前はどうすっかなって」

「そもそも何処に?」

「例えば海外とか…。ついて行く?」

「いかねぇよ。そこに俺が行く意味あんの?つか何?美咲ちゃん、海外行くのかよ」

「え、なんで?」

「どう考えてもその流れじゃね?」

「あー…、そっか。そうだよな」

「何しに行くん?」

「留学な」

「あー…、って、え、なに?お前行こうか悩んでんの?」

「いや。行く選択は何もないし考えたこともない」

「なら、なんで聞いてきた」

「何でかなー…」


んな事、俺にもわかんねぇわ。

ほんと、最近そんな事ばっか考えてて、自分が嫌になる。

誰かの意見を聞いたところで何もねぇのに。

聞いてその意見を参考にしようとも思わねぇのに。


ほんと、なんだよって話だな。