暫くして、目の前に蓮斗の車が停まる。

吸っていたタバコを地面で消し、吸い殻を持って車のドアを開けた。


「お前、何してんの?こんな所で」

「あー…、美咲んとこ」


そう言いながらタバコを灰皿に入れ、ドアを閉めた。


「あぁ、だからここ?」

「うん」

「つか俺を夜中のタクシーに使うな」

「この時間、お前しかいねぇんだよ。流星は酒飲んでっしよ」

「タケル呼べや」

「いやー…流石にこの時間にアイツと会うのキツイわ。話がしんどい」

「多分帰れねぇだろうな。で?なんでそんな浮かねぇ顔してんの?」


運転しながら俺の方を見てクスクス笑う蓮斗を俺は一瞬だけチラリと見て、再び視線を前方に向ける。


「いつもと一緒だろうが」

「ま。お前に興味ねぇからどうでもいいけど」


フッと再び笑った蓮斗に俺は軽くため息を吐き出した。


「んじゃあ聞くなよ」

「いや、聞いてほしそうな顔してたから」

「どこが?」


呆れた表情で呟くと蓮斗は再び面白そうに笑う。

と同時に不意に鳴り出した着信音。

その音は隣の蓮斗からで、蓮斗はポケットに入れていたスマホを取り出し、画面を確認した後、コンソールボックスの上に置いた。


「…どした?」

「ごめん。レンの書類、鞄の中に入れたままで持って帰ってきてしまったんだけど」


スピーカーにしたのだろう。

電話口から漏れてくる梨々花の声が車内に響き、俺はボンヤリと窓の外に視線を向けた。


「あー…、もうこのまま帰っからさ、昼頃にお前んちに取りに行くわ。明日事務所来ねぇだろ?」

「うん。午後から仕事なんだよね」

「じゃあ行くわ。行く前電話する」

「わかった。じゃ、おやすみ」

「はい、おやすみ」


切れたスマホを一瞬見てから蓮斗にチラリと視線を送った。