「なんか新鮮だよね、こうやって帰るの」

「うん?」

「いつもさ、車でしょ?こうやって歩くのも悪くないなーって」

「明日も来ようか?」

「こんな時間までしてません。今日はほんとたまたま。欠勤の子の代わり」

「ほんっと人助け好きだな。あっち行ってもそんな無理してまでバイトすんなよ」

「大丈夫。メインは学業だから」


見上げて微笑む美咲に俺も口角を上げる。

ほんとかよ、と思いつつもそれを口にはしなかった。


15分もかからない距離。

美咲と歩くその時間が物凄くに早くて、目の前に美咲の家が見える。

その家から視線を美咲に移した。


「お母さん、心配してんじゃね?」

「遅くなるって言ってるから。それにもう寝てると思う」

「みぃちゃんも早く寝な」

「翔もじゃん。どうして帰るの?」

「駅でタクシー拾おっかな」

「ここら辺タクシーそんな通ってないよ?…泊ってく?」

「いや、朝仕事だし帰るわ。ツレ呼ぶし俺の事はいいから、早く寝ろって」


フッと笑みを浮かべ美咲の頭をクシャりと撫でる。


「…うん」

「早く入れって」

「私が翔を見送ってから入るから」

「俺が見送るっつーの」

「私だよ、」


クスクス笑う美咲に思わず苦笑いが漏れる。


「帰れねぇだろ、マジで」

「朝まで続くかも」

「続かねぇよ、早く入れって」

「うん。…おやすみ」

「おやすみ」


美咲が家の中に入ったのを確認してから俺は再び足を進める。

腕時計に視線を落とし、軽く息を吐き出す。


もうすぐで2時。

流石にこんな時間にタクシーなど捕まるわけでもなく、歩いて帰れる距離でもない。


どうすっか。と思い、ポケットからスマホを取り出し、俺は頭に過った人物にコールをした。