「つか今から帰るって、どーやって?」

「歩きだけど」

「いやいや、ちょっと待って。つかさ、俺が知らなかっただけで、いつもこんな時間までしてたって事?」

「あ、ううん。今日はたまたま」

「たまたまねぇ…。今からそっち行くから待ってて」

「え、いいよ。近くだからすぐ帰れるし」

「近くってどこ?」


美咲に場所を聞いて俺は電話を切る。

美咲が言う通り、ほんと近くの場所だった。


美咲の最寄り駅の場所。

今初めて聞いた居酒屋の名前だった。


タクシーで居酒屋の近くで降りると、美咲がすでに外に出ていて、歩く俺の姿を見つけると笑みを漏らした。

美咲の笑みとは裏腹に、俺は思わずため息を吐き捨てる。


「…なんか怒ってる?」


スッと笑みを消した美咲は俺近づいてすぐ口を開く。


「怒ってる。こんな時間まですんなよ。帰りあぶねぇだろ」

「ごめん。でも近くだし」

「いつから?」

「え?」

「いつからここで働いてんの?」

「12月。もう一つのバイトしてる子から聞いて。人手不足って言うから」

「どんだけいい人なんだよ、お前は。こんな時間までするかねぇ…」

「卒業したら時間関係なく働けるから。あ、今日みたいな時間はあまりないよ?」

「あったら困るわ。だから俺に会いに来ねぇのな」

「そう言うんじゃないけど…」


また濁すように呟いた美咲に俺はフッと笑みを漏らした。


「ま、それがみぃちゃんだから今更何も思わねぇけど」

「だってさ、」


そこまで言って口を紡ぐんだ美咲は視線を逸らし顔を俯ける。

そんな美咲の頭に手を乗せて軽くポンポンと触れる。


「その続きは言わなくていいわ。帰ろ」


そう言って俺は美咲の家の方向に足を進める。

聞かなくったって分かる。

美咲の言いたいことくらいわかる。


どーせ、俺が疲れてるから会えない。とか言うに決まってる。

そして、前回言ったみたいに、会えば会うほど離れるのが辛いって、言うに決まってる。


俺はそれでもいいから会いたいと、思う。