美咲の家の近くに車を停めると、「ありがとう」と美咲の声が返って来る。

そんな美咲を俺は無意識に抱きしめた。

今度いつ会える?

今度いつ来る?

そんな言葉すら言えない俺は情けない奴で、いやむしろ言うと美咲を困らせるだけ。


と、言うか。

俺がそんな風に思う男だった事に驚いた。

初めて抱く感情が、言う事すら聞いてはくれなくて、言葉の代わりに俺は美咲の唇を塞いだ。


(ついば)むキスをから徐々に角度を変えながら重ね合す。

それを受け答える様に美咲の腕が俺の首に回り、更に唇を重ね合わせた。


来ると言った美咲の言葉が信用できないわけじゃない。

ただ何故かもう会えないんじゃないかって、そんな事が頭を過る。


そんな余計な考えを吹き消すように俺は美咲の頭を抱えながらキスを交わした。


だけど時間は待ってはくれなかった。

ポケットから鳴り続けるアラームの音。


「ごめん。もう時間だわ」


言いながらポケットに手を伸ばしアラームを消すと、美咲は頬を緩めて首を振った。


「また…ね」

「あぁ。おやすみ」


美咲の頭を撫ぜると、美咲は頷いて車から降りていく。

手を振る美咲に笑みを浮かべ、俺は車を発進させた。


そして思わず出てしまったため息。

自分でも思う。

最近やけにため息が増えてしまったことが。


美咲が旅立つ日を数えているわけじゃない。

ただ無意識に数えている自分がいる。


俺って結構、独占欲強いのかも知んねぇな。

そう思うと、そんなことを言っていた蒼真さんが頭に浮かんで、苦笑いが漏れた。