「なぁ、一応確認すっけど、みぃちゃん今日が最後とか思ってる?」

「…え、なんで?」

「そんな話の流れじゃねぇかよ」

「来るよ」

「ほんとかよ」


思わず呟いて苦笑いが漏れる。


「ほんとに来るよ。今日が最後じゃないよ」


俺の顔をジッと見つめた美咲の瞳に吸い込まれるように俺の足は美咲の隣に進む。

隣に腰を下ろしてギュッと美咲の身体を抱きしめると、同じ様に美咲も俺の身体に腕を回した。


「来ることに躊躇ってる?」

「なんで?」

「俺の事、心配して躊躇ってる?」

「……」

「俺が疲れてるからって躊躇ってる?」

「……」

「…みぃちゃん?」

「……」


答えない美咲に、図星だと感づく。

そう思われてることが俺には嬉しいとは思えずにいた。


「俺は毎日でもみぃちゃんに会いたいと思ってる」

「……」


あと数週間しかない。

その日数のうち、あと何日会えるのだろうか。


「みぃちゃんは会いたくないかもだけど、俺は会いたい」

「会いたくないわけないじゃん…」


小さく呟かれて、美咲の腕に力が入り、更に俺を抱きしめる。


「でも…」


続けて呟かれる小さな声に俺は「うん?」と声を漏らす。


「会えば会うほど離れたくなくなる。だから会わない方がいいのかなって思ったりもする」

「意味わかんねぇな、まじで」

「……」

「なんなの、その考え」

「……」

「ほんっと、美咲らしいわ」


フッと笑って身体を離し、俺は立ち上がって脱衣所に足を進める。

洗面台に手をつき頭を下げて目を閉じる。

そして深く深呼吸をした。


そのまま水を出し、顔を洗う。

髪についた水滴がポタポタと落ちる雫に視線を向けて、もう一度ため息を吐き捨てた。


美咲の会話からして、会うのはあと1回か2回ってとこだろう。

だからと言って、行くまでここに住めば?なんて言えなかった。


美咲には母親が居るから。

お母さんも同じ気持ちだろうなって思うから。