「みぃちゃんはそのまんまでいいじゃん。強いとか弱いとかそんなのどうでもいいだろ。そう言うの考えれば考えるほど疲れんじゃん」

「そうだよね…」


小さく呟いて俺に視線を向けてくる美咲に顔を向ける。

かち合った瞳に頬を緩ませる美咲に俺は身体を起す。


「…翔ありがと」

「どした?」

「翔と出会ってなかったら居場所も自分見失ってた」

「俺もみぃちゃんと出会ってなかったら腐ってた」

「何それ」


クスクス笑いだす美咲に俺も頬を緩める。

多分、こんなに俺の事を心配してくれる美咲と出会ってなければ、きっと今でも自分の身体の事を意識せずに過ごしていただろう。


「うん、みぃちゃんが大切だって事。守るべきものがあれば頑張れんじゃん」

「あのさ、」

「うん?何?」

「旅立つ日、来なくていいからね」


突然言い出した美咲の言葉に俺は一瞬目を見開く。

何言ってんの?来なくていいとか、まじで意味分かんねぇんだけど。


「…何で?」

「だって飛行機乗り遅れちゃう。翔の顔見てると離れるの辛くなるから」

「……」

「だから、来なくていい」

「てか、マジで言ってんの?」

「うん。マジじゃなきゃ言わない」

「最後くらい送らせろよ」


そこでしかもう会えねぇのに。

そこが会える最後なのに。


「やだよ。ホントに別れ辛くなるから」

「……」

「…だからお願い。来なくていい」


最後の最後に意味分かんねぇお願いだな。

なんならもっといいお願いしてほしかったくらいだわ。


つかなに?

あと数週間あんのにそんな話かよ。

美咲の事だから、今日で会うのが最後とか思ってんじゃねぇだろうな。


でも、まぁ美咲が言う言葉が合ってんのかも知れねぇなって思ってしまった。

きっと俺は行く寸前に引き止めてしまいそうで――…


「それ本気?美咲がそれを望むのなら俺は行かないけど」


美咲の気持ちを確かめ、そしてそれを望むしかないんだって思う俺に美咲はコクンと小さく頷いた。