「お袋が亡くなってから、寂しいって思った事はいっぱいあった。現に俺がいっぱい苦しめて亡くなったようなもんだったからな」

「……」

「疲れたって思う事もあったけど、人生には疲れてなかったけど」


むしろ母親への償いのほうが大きかった。

まだ全然、あの人とは比べ物にならないけど…

そう思うと自然に苦笑いが漏れる。


「そっか」

「下っ端の頃はさ、嫌で嫌で仕方なかったけど、でもいつかは挽回してやろうと思った」

「……」


10代の頃は見下される事、反発される事、全てが嫌でうっとおしく思えた。

母親が亡くなってから気づかされた。

このまま大人になる不安。

周りから母親を殺したなんて言われたどうしようもない息子。

そんな言葉を跳ね返してやろうって、ずっと思って来た。


いつかは絶対に上に立つって。


「まぁ男のプライドってやつかな」


決めたなら最後まで全うしたいって。

でもそう思っていても未だ自分が描く未来は描けていない。


そう思うと、何故か情けない笑みが零れた。


「そっか。なんか…だからなのかな。翔の存在が凄く大きく見えんの」

「何それ…」


俺の存在が大きく見えるって、なに?

そんないい男でもなんでもねぇっつーの。

俺はまだお前に何にもしてやれてねぇのに。


「よく分かんないけど。私はさ、ママが居るのに寂しいって思ってたし、毎日の様に口癖が疲れただった。強くなりたいって思ってても結局は弱いまま」


そう語る美咲に視線を向けると、美咲は何故か寂しそうに笑った。

てか、そこまで頑張る美咲が弱かったら俺はどうなんのって話。

ほんといい生き方なんてしてねぇのに。