「テレビねぇ…」


小さく呟きテレビに視線を向ける。

画面に流れてくるにニュース番組に視線を向ける美咲の身体を俺は自分に引き寄せた。


「翔?」


俺が抱きしめた事で美咲の小さな声が零れ落ちる。


「じゃあベッド行こ。朝まで…」


ずっと居たいのは俺だけか。


「もぉ、何言ってんの?」


グッと離された身体。

そう。これが美咲だよな。

戸惑い気味に言った美咲は困ったように笑みを浮かべた。

だから俺までも思わず笑みを漏らしてしまった。


「うそうそ。今日は帰って、お母さんに会わねぇとな」


立ち上がって美咲に背を向けた時、背後から「うん」って小さく返事が返って来る。


「なんか飲む?リンゴジュースだったらあるよ?」

「それでいいよ」


冷蔵庫から取り出して、それを美咲に手渡して美咲の前のソファーに腰を下ろす。

刻々と時間が過ぎ、美咲とのこの何気ない空間も悪くないと思った。


テーブルにあるタバコに手を伸ばし、それを咥えて火を点ける。


「ねぇ、翔?」


暫くして口を開いた美咲に俺は視線を向ける。


「うん?」


ソファーに身体を預けていた美咲は身体を起し、ソファーに深く背をつけて座り直した。


「翔はさ、寂しいとか人生に疲れたとか思った事ある?」

「人生に疲れたとか、なんだよそれ。なんの話?」


急にどした?と思えるない内容に俺は思わず笑いだす。

なにその人生論。


「うん、ほら…翔ずっと一人だったし、仕事も大変そうだし」

「あー…」


なるほどね。

また心配話?つか、仕事は俺が望んでしている事。

誰かにやらされてしている事でもねぇから大変とか思ったこともない。

吸っていたタバコを灰皿にすり潰し、俺は身体をソファーに預け、天井を見上げて軽く息を吐き捨てた。